屈折矯正手術                                       

近視手術はいつから行われていますか                           
 屈折矯正手術という概念を最初に提唱したのはドイツのSnellenという人で1869年の事です.今から約130年も前のことです.それは近視手術ではなく乱視手術についてでした.その後多くの研究者たちによって改良が重ねられてきました。注目すべきは当初は白内障手術の術後に発生する乱視の矯正手術として考えられていた.その後角膜の後面よりを放射状に切開する方法が開発され,更に後面と前面の切開を併設する方法,最近の角膜前面のみの放射状切開,さらにエキシマレーザーを使用した角膜前面を切除する方法が考えられてきました.現在の近視・乱視の矯正手術は効果も十分に期待も十分に期待でき,また安全な手術として行われております.当時の研究者たちにとってレーザーにて屈折矯正手術が行われるということは夢の様なことであったに違いありません.現在における屈折矯正手術には以下に揚げるものが代表的です.現在ではほとんどがこの中のどれかでされています.

現在どのような手術が行われていますか       
 
 
前項で少し触れましたが,代表的なものについて詳しく紹介したいと思います.

RK (Radial Keratotomy) Radialとは放射状という意味,Keratoが角膜,Tomyが切開という意味から,放射状角膜切開術ということになります.通常はダイアモンドメスにて,中心部の光学領域を除く傍中心部より周辺に向かって放射状に4本から8本切開する方法です.(図挿入)近視矯正の程度は切開をしない中心部の範囲と年齢によって決定することができます.切開線の深度は約90%〜95%まで達するものをおきます.手術時間は15分〜30分程度です.患者はその間,眼球を保持された状態で固定されておりますが,痛みに対してはさほど問題になるものはありません.

切開を受けた角膜の創傷治癒過程は 3期に分けることが出来ます.まず上皮層であって切開層を上皮が埋める時期で48時間までに起こります.この時期を過ぎれば疼痛や異物感は改善されてきます.次に実質層で上皮層によってとじられた部位に筋繊維芽細胞が置換する時期で6週間までの時期です.この時期をもって角膜の平担化が保持される時期です.最後に二次創傷治癒相で角膜の強度を増す時期で1ケ月までの時期です.したがってこの時期に相当する経過過程で角膜の外来通院チェックが必要となるわけです.RK手術は角膜をダイヤモンドメスにて角膜の厚みの95%を4本から8本の切開を加えることにより,角膜を平坦化し屈折度を軽減させ,結果的に近視を治す手術です.角膜を切開するために手術後麻酔覚醒時より軽度の疼痛や異物感が起こることがありますが,重要なことではありません.この手術は低矯正ぎみに手術を行うわけでありますが,術後の残余近視を手術前に精密な検査によって計算し,それに基ずいて手術を行うという点でPRK手術よりも熟練を要すると言うことになります.患者の眼の状態を十二分に把握し,それに基ずいた手術を行わなければなりません. 

AK(Astigmatic Keratotomy)   Astigmaとは乱視,Keratoは角膜,tomyは切開の意味です.つまり乱視矯正のための角膜切開術ということになります.乱視矯正手術の方が近視矯正手術より歴史的にはずっと前より行われておりました.それは白内障術後の乱視が問題になっていたからです.現在では白内障の技術が進歩し術後に高度の乱視が発生することは少なくなりました.
 この手術も角膜をダイヤモンドメスにて切開する方法ですが,さきほどの近視矯正手術と切開する場所に違いがあります. AKは図の如く角膜周辺部を弧状に2ケ所切開する方法で明らかにRKよりも容易で手術時間も短くてすみます.RKAKも視力の最も大事な部分を傷つけない点が大きな長所となっておりますが,反面術者の高度なテクニックと経験が要求されるものです. 

PRK(Photorefractive Keratectomy) Photo
LASIK:
 光はレーザー,refractiveは屈折,keratoは角膜,tomyは切開という意味になります.つまりレーザーによって行われる屈折矯正手術(特に近視矯正手術)というこのになります.現在最も注目をあびる方法の一つです.エキシマレーザーによって角膜の前面の中心部を切除する方法ですが,角膜の前面を上皮の上から直接削る方法
PRKと前面をフラップ状に剥がし,その下をレーザーで削りそのフラップをまた元に戻す方法LASIKとがあります.後者の方法が術後の異物感が非常に少なく,両眼同時手術も可能になります.また術後の創傷治癒過程も早く,患者への手術侵襲も少ないものですが,角膜のフラップをつくる過程が手術的テクニックを要し,熟練が必要となります.現段階ではこのLASIK法が今後進歩する方向にあります.レーザーによって角膜を削る量は,コンピューターによって制御されていますのでそう難しいものではありません.そのため眼科的検査を十分に行わずとも手術をすることが可能となっている点で,眼科的疾患を十分に検査せず行われる危険性も含んでおりますので,やはり十分な経験を積んだ眼科専門医によって行われなければならないことは言うまでもありません.眼科手術においてもほかの診療科と同様に現在では色々なレーザーが使用されています.たとえば糖尿病においても(糖尿病性網膜症)網膜の光凝固術,眼圧の高くなる病気(緑内障)において房水の排出を促進する手術などはアルゴンレーザーを使用しますし,以前では未熟児網膜症において網膜の治療でキセノンレーザーを使用して治療を行っております.近視や乱視の矯正手術を行うためのレーザーはエキシマレーザーと言いまして,自然界には存在しないレーザーです.このレーザーが眼科領域に使用し初めてから約12年になります.
 ではエキシマレーザーとはどのようなものであるのか.エキシマ
(Excimer)は,excited dimerからの合成語で,不活化ガスとハロゲンガスの原子の結合した状態です.この両者は通常分離していますが,電気エネルギーにより励起されるといったん結合したのち,直ちに分離する.このときに放出される光子により発振されるレーザーがエキシマレーザーです.このレーザーの出現によって眼科領域において近視の手術が可能になったわけです.このレーザーを発振する装置は現在では非常に高価なものです.またこのレーザーは分解も非常に早いので絶えず補充の必要があります.その都度費用がかかりますので,この辺の関係からも手術費用にはね返っている訳です.
 PAK(Photoastigmatic Keratectomy) Photo は光とかレーザー,astigmaは乱視,keratoは角膜,tectomyは切除と言うことになりますので,レーザーを使って行われる乱視矯正手術と言うことになります.上記のPRKと同じテクニックと考えて良いと思います.

手術によってどの程度近視を治すことができますか        
 
 
手術の術式によって近視の矯正可能度数は違います.LASIKの場合12Dまでの近視を矯正することが可能です。12Dの近視と言えば裸眼視力で人によって差はあるものの0.02位と考えて良いかと思います.手術によって視力1.2まで回復することが出来ます。ただし12D以上の近視を行う場合は、角膜厚(角膜の厚み)が左右されますので、全ての人にとって可能とは言えません。ただし,このような高度の近視には悪性近視などが含まれていますので,眼科的検査を十分に行う必要があります.

近視手術は誰でも受けることができますか     
 
 
手術に支障をきたす眼科的疾患を有しないと言うことが絶対的な条件になりますが,もしその点をクリアーしたとしても年齢的に18未満は適応外となります.それは創傷治癒が非常に盛んな年齢であるということと,生体の発育過程であるとう点です.創傷治癒が盛んな場合は角膜の切開や切除による角膜の平坦化の効果が十分得られず,矯正が出来ないからです.また発育過程である点については,まだ解明されていない生体の神秘性と言う点を考慮しなければならないと言うことです.

近視手術の時間と手術後の安静の程度は   
 
 
近視手術は,手術方法によって異なりますが,当院にて行うLASIK手術は10分より15分位と考えてよいと思います.術後眼帯は着用せず手術当日は軽度の安静を保つ方が良いと思います.翌日に強い疼痛を来すことは通常ありませんが,2日までは上皮の創傷治癒過程ですので感染には十分に注意を払う必要があります.勿論激しいスポーツは避けなければいけません.特にケンカやケガなどによる眼部の強い衝撃は絶対に避けなければなりません.当初は薄めのサングラス等の着用が好ましく,それは外傷への保護と光線によるまぶしさへの保護に役立ちます.
通常の制限は,以下の様になっています.
l 入浴・シャワー  翌日より
l 洗髪       1週間後より
l 洗顔       手術眼を避ければ翌日より
l 車の運転     通常は1週間後より
l 水泳       1ヶ月後より
l お化粧      翌日診察後より
l 飲酒       翌日より

 

近視と乱視を同時に治すことができますか     
 
 
可能です.むしろ乱視の強い例においては同時手術が良いと考えます.術後の安静などは近視や乱視の単独手術と同じと考えて良いと思われます.

近視や乱視手術を受けた後に起こる合併症にはどのようなものがありますか  
 
 
角膜切開や切除術によって起こる重大な合併症はそれほど頻繁に起こるものではありません.しかし皆無ではありません.合併症は患者の眼を眼科的な専門知識を熟知しているこによって多くは予防できるものと考えています.また実際に起こった場合には早期に発見し直ちに治療を開始すれば重大なものにはならないと思います.そのためにも術後の来院は非常に大切なことになります.合併症を大きく分けますと,術中合併症,術後合併症に分けられます.LASIK手術は,もっとも安全な手術方法と言われています.

術中合併症  RK(角膜をダイヤモンドメスにて切開する方法)手術において角膜の穿孔が最も重篤な合併症と言えます.これは術者の未熟性に起因することもありますが,角膜の95%以上の深度で切開を加える必要があるために時にはやむおえない場合もあると思います.しかし穿孔が起こった場合,その後の適切な対処によって問題になることはありません.

術後合併症 ハロー・スターダスト

      屈折の日内変動

      角膜感染症

      コンタクトレンズ不耐症

      屈折の低矯正・過矯正

 ハロー・スターダスト 像のの周囲のぼやける減少や夜間の車のライトが散乱して見える現象などで,不正乱視が原因となっています.術後の不正乱視は術者の技量にかかわる部分とそうでないものとがりますが,不正乱視を作らないようにすることである程度発生を予防することが出来ます.

 屈折の日内変動 術後数ケ月のうちに起こる現象.創傷治癒過程で完全に治癒が行われていない過程の現象で,創傷治癒が進むにつれて症状は緩和されます.

 角膜感染症 術後早期に発生することが多い.術前の抗生物質の投与や術後管理をまた患者への感染への教育の徹底などにより予防することが出来ます.この術後感染は近視手術そのものによる場合よりも術後の創傷の保護のためのコンタクトレンズ装用による場合が多い.

 コンタクトレンズ不耐症 手術技術にも関係しますが,それ以外の要因(創傷治癒の個人的な差)も関連します.

 術後の低矯正・過矯正 特に RK手術においては低矯正ぎみに手術を行ったほうがよいと思われます.何故なら追加手術が可能であるからです.出来るだけ過矯正にならないように心がけて手術を行うことによって過矯正の予防を避けることができます.

 以上述べた合併症以外にも頻度は少ないにしろあることを述べておきます.詳しい点はあなたが手術を受けられる時に医者やスタッフより十分に説明を受けられる事と思いますのでここでは割愛させていただきます.
当院においては最も合併症が少なく手術侵襲の少ない
LASIK法を行っています。